iLife ’08がリリースされ最も大きく変わったのがiMovieなのは皆さんご承知の通り。
GUI一新で全く別のソフトとなったiMovie ’08を遅まきながらレビューしてみます。
iMovie ’08と呼ばれていますが、iLife ’07が飛ばされてしまったので正式なバージョンは7で、先日バグフィックスのアップデートがあり7.0.1が最新バージョンです。
個人的には、iMovie HDと呼ばれるバージョン6の段階でかなりの高機能となっていたため「つぎなる機能追加はAVCHDへの対応程度だろう」と思っていたのですが、iMovie ’08は従来のiMovieとは全く異なったソフトウェアとして1から設計されておりかなりビックリです。
ちなみに新しいGUIは相当のCPUに負荷をかけるようで、iLifeの他のソフトがPowerPC G4プロセッサを搭載したMacで動作するにも関わらず、iMovie ’08のシステム条件は「iMac G5(1.9GHzより高速)、Power Mac G5(デュアル2.0GHzより高速)または Intel Coreプロセッサを搭載したMacintoshコンピュータが必要」と敷居が高く、実際にPowerBook G4などにインストールするとダイアログが表示されてiMovieはインストールできませんでした。
【以下画像はすべてクリックすると拡大】
PowerPC G4プロセッサのユーザは従来のiMovie HDを無料でダウンロードすることが出来るので、Intel Macを購入するまではこれを使用することとなるのでしょう。
実際にインストールしてみるとIntel Macであれば2GHz Core DuoのiMac(初代Intel iMac)でもストレス無く動作し,
ヘタするとPower Mac G5 デュアル2.0GHzよりもスムーズなぐらい。(Intel恐るべし)
さて肝心の一新されたインターフェースですが、非常によく考えられており感心するばかり。
カメラを接続して、読み込みボタンをクリックすると取り込みウインドウが表示され動画の取り込みを行うことができます。
このとき取り込みモードを自動に切り替え、読み込みボタンをクリックすると自動的にテープの頭に巻き戻り、ムービーの取り込みが開始され、テープ上の記録が終了すると自動的に停止します。
取り込まれた動画はシーン毎に別のクリップとして分割され、撮影日毎に別イベントとして保存されます。
iPhotoに写真を読み込んだ際と同じようにライブラリで管理できるわけです。
ライブラリ上にはクリップのサムネールが表示され、その上でカーソルを動かすとサウンド付きでプリビューすることが可能なのが非常に良くできています。
このあたりの処理にCPUパワーが必要となるのでしょう。
素材の取り込みが完了したら編集ですが、以前のiMovie HDがクリップをタイムライン上に配置した後不要な部分をカットするなどのトリミング作業を行っていたのに対し、iMovie ’08ではそもそもタイムラインが存在しません。
ライブラリ上でマウスを動かしてプリビューし、必要なカットの始点が見つかるとその位置でクリックします。
黄色いボーダーでマークされた部分がプロジェクトに取り込まれようとしている部分です。
必要なカットの終点を変更したい場合は黄色いボーダーの右端をドラッグすればプリビューしながら自由に設定できます。
始点と終点の位置が決定したらプロジェクトウインドウにドラッグ&ドロップします。
次々にクリップをプロジェクトにドラッグすることで編集を行います。
iMovie HDよりも遙かに効率的に編集が可能な上、始点と終点の位置を正確に設定することもできるため、さらに精度の高い編集を行うことができます。
プロジェクト上のクリップは左右の矢印をクリックして始点や終点の位置をのばすことも出来ます。
さらにクリップのトリムを選択することで、プロジェクト内で始点と終点を後で自在に変更することも可能です。
クリップを選択してビデオ調整ボタンをクリックすると、ビデオ調整パレットが表示され色補正など画質の補正を行うことができます。
同様にオーディオ調整ボタンをクリックすると、オーディオ調整パレットが表示されレベル調整することが可能です。
ノーマライズ機能が搭載されたのはクリップのレベル調整を行うのに非常に便利でしょう。
BGMなどを付けたい場合は、BGMを直接プロジェクトにドラッグ&ドロップ。
BGMの長さを調整したい場合はオーディオのトリムを選択することで、画面をプリビューしながら自在にトリミングを行うことが可能で、
複数のBGMを使用した際、曲のつなぎ目はクロスフェードとなります。
映像にはトランジションも簡単にかけることができ、
複数のテンプレートから好みのタイトルを付けることもできます。
簡単にiMovie ’08を見てきましたが、様々なblog等を見ていると、あまりの違いに「以前のiMovie HDの方が良かった」という声も聞かれます。
実際iMovie HDには搭載されていたビデオやオーディオのエフェクトがすべて無くなってしまったのには驚かされました。
ビデオのエフェクトといってもQuartz Composerのような高度なものを初心者がホイホイ使用するとは思えませんが、スロー再生やファスト再生が出来ないことや、オーディオのイコライザーが使用できないのがちょっと辛いと言えるでしょう。
またオーディオミックスをタイムライン上で行えないのも不評です。
タイトル用のテーマも無くなってしまいました。
[iMovie HDのテーマ]
ただ、iMovieの進化を見ていると、iMovie HDはバージョンアップの度に機能が追加された為、複雑になりすぎたと言えるかもしれません。
iMovieの役割は完璧な初心者でもビデオ編集にチャレンジしてもらおうというアプリケーションであることを考えると、iMovie ’08の方向性は正しいと言えるでしょう。
iPhotoは初心者にもずいぶん使用されているようですが、iMovie ’08はiPhotoと非常に似ています。
スライドショウやアルバムを作るようにビデオのプロジェクトを作るわけで、保存すらする必要がありません。
iMovie ’08はビデオ編集というものをもう一度最初から見つめ直して、初心者のために再設計したビデオ編集ツールといえるのでは無いでしょうか?
持っていないので、今回試せていませんが、AVCHDのカメラからの取り込みにも対応しているとのことで、これも大きなメリットでしょう。
ただ、様々な機能を切り捨てていった結果ちょっと困ることもあります。
まずはDVD用のチャプターマーカを設定できなくなってしまったこと。
そもそもiDVDとパッケージになっているにも関わらず、iMovieとiDVDに密接な連係機能がないというのはいかがなものでしょう??
そして、カメラへの書き出し機能がないこと。
これには驚かされました。
960×540ピクセルでAppleTVなどへ転送してテレビで見るのが最大の解像度です。
HDVなどからHDで取り込みを行ってもカメラへの書き戻し機能がないため、編集結果をHDで家庭用のテレビで見ることができません。
iMovie HDは現在でも無料でダウンロードできるので、iMovie ’08からQuickTimeとしてHDフォーマットで保存したファイルをiMovie HDに読み込んだ後、カメラへの書き出しを行うというようなことをしなければならないのかもしれません。(このあたりは後日試してみたいと思います。)
何はともあれこの2つの機能は是非バージョンアップで追加して欲しいものですが、難しいかもしれませんね。
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