キース・エマーソン来日公演最終日レポート
今回のKeith Emerson Bandの来日公演はニューアルバムの発売も手伝ってか妙に盛り上がっていますよね。
一般的にマイナーなプログレ業界で東京3公演というのは異例の多さ。
挙げ句の果てにキース エマーソンが朝の情報番組とくダネ!生出演というのも異例中の異例。
録画して見ましたが、お茶の間の若い奥さん達にエマーソンはどう写ったのでしょうね。
前のエントリーでは10月15日の初日の模様をレポートしましたが、昨日10月20日はいよいよ来日公演も最終日。
大阪の松下IMPホールへ行ってきました。
IMPホールは本来音楽ホールではなく、格闘技なども行う多目的ホール。
雰囲気も陰気くさいし音も良くないので嫌いなホールです。
2000人規模のCCレモンホールと違って、800人程度しか入らない狭いホールでなのですが、そもそも大阪って通常のコンサートに使用できるホールが非常に少ないので贅沢言えません。
当然会場に入るとキャパが小さいので、完璧に満席。
初日と同じく「録音するな!撮影するな」のプラカード持ったスタッフがウロウロしており、同様のアナウンスもしつこく流れています。
一生懸命バックあけてカメラチェックしていますが、今の時代携帯電話取り上げなきゃ意味ないんじゃないかなあ・・・なんて思いつつシートを探していたらシートがない!
チケット見たらD列と書いてあるのですが、すでに人が座ってるので係の人に聞いたらD列では無くてDd列とのこと。(小文字のdにも意味があったのね。)
DdはAより前というので行ってみたら、スピーカーより外側の壁際にパイプ椅子が2個置いてありました(-_-;)
なんだか所在ない座席ですがまあステージ上に見切れはないからよしとしましょう・・・
ステージ上のセッティングは15日とほぼ同じ。
キースのセットはModular MoogとHAMMOND以外は、KORGのOASYSとTRITONでした。
以下がこの日のセットリストです。
以前ご紹介したラトビアのセットリストと同じですね。
2008年10月20日(月) 松下IMPホール セットリスト
1. Ignition(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
2. 1st Presence(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
3. Last Horizon(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
4. Karn Evil 9: 1st Impression, Part 2(Brain Salad Surgery)'73
5. Piano Concerto No.1 Third Movement(Works, Vol.1)'77
6. Bitches Crystal(Tarkus)'71
7. Malambo(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
8. Touch And Go(Emerson, Lake & Powell)'87
9. Lucky Man(Emerson, Lake & Palmer)'70
10. Miles Away pt1(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
11. Miles Away pt2(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
12. Crusaders Cross(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
13. Fugue(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
14. Marche Train(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
15. Finale(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
16. The Barbarian(Emerson, Lake & Palmer)'70
17. Prelude To A Hope(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
18. A Place To Hide(Keith Emerson Band Featuring Marc Bonilla)'08
19. From The Beginning(Trilogy)'72
20. Hoedown(Trilogy)'72
21. Tarkus(Tarkus)'71
ENCORE------------------------------------------------
22. Fanfare For The Common Man(Works, Vol.1)'77 ~America
23. Natcracker~Nutrocker(Pictures at an Exhibition)'71
初日に出てきた鼓(つづみ)奏者用のマイクは無くIgnitionが流れる中のメンバー登場。
やはり鼓は思いつきだったようです。
1st Presenceから演奏開始。
初日の演奏とは違ってリハビリムードは無し。
メンバーはリラックスし、非常に丁寧に演奏しているのが伝わってきます。
すばらしく良い!!
Last Horizonが終了し、Moogからサンプル アンド ホールド音が鳴り響きはじめ、その音が徐々にKarn Evil 9のオープニングへと変化していくのですが、途中で音がストップしたり、うまく変化しなかったりといきなりトラブル!
まあなにせMoogも年代物ですからキースも幾度となく修羅場をくぐっているわけで、この程度のことではうろたえません。(^_^;)
数回のトライで無事Karn Evil 9のスタートです。
日本公演の最終日ともなるとマーク・ボニーラも絶好調。
グレック・レイク似ののびのあるボーカルを聞かせてくれ、全くセーブしている雰囲気は見えません。
キースはMaple Leaf Ragのフレーズなどを交えたりはするもののほぼ原曲どおりの演奏です。
Piano Concerto No.1は15日と同じくロック仕立てですが、キースのプレイが半端じゃない。
さらにギターも思いっきり前面に出てきているため、よりロックっぽさが強調されます。
というかPiano Concerto No.1なのに怒濤の演奏とでも申しましょうか・・・演奏終わったら歓声とともに拍手が鳴り止みません。
ここでメンバー紹介。
「一番はベースです!」と日本語なども交えつつ和やかに進行します。
Keith Emerson(Key)
Marc Bonilla(G, Vo)
Travis Davis(B)
Tony Pia(Ds)
続いて演奏されるBitches Crystalはテンポ檄早!
EL&P時代の曲が続いたところで、次はニューアルバムからバレエ組曲「エスタンシア」のフィナーレMalamboをキース風にアレンジ。
さらにEmerson Lake & PowellのTouch And Goと多彩なアルバムからの選曲が続きます。
Touch And Goはオリジナルよりもヘビーな雰囲気です。
続くLucky Manはマーク・ボニーラのニューアレンジで、オープニングはシーケンスから入り、次第に重厚なロックバラードへと変化します。
スネアーには深いリバーブがかかり、好きな感じです。
エンディングはおなじみキースのMoogソロ。
初日はMoogがデカすぎてなんだか分かりませんが、今回は非常にバランス良く、アナログシンセの様々な技が駆使されたど迫力の状態で終わります。
ここからはしばらくニューアルバムからの曲が続きます。
Miles Away pt1ではキースはアコースティックピアノへ。
アコースティックピアノの脇には電気スタンドが舞台セットで置いてあるのですが、キースは演奏中スタンドの電気が点灯しないのをしきりに気にしている様子(笑)
EL&Pの曲は大きくアレンジしたりアドリブがかなり入るのですが、ニューアルバムからの曲はオリジナルに非常に忠実に演奏されます。
ちなみに電気スタンドは最後まで点灯しませんでした。
今回何よりうれしかったのは15日には演奏しなかった、Marche TrainとFinaleを演奏したこと。
Marche Trainはホルストの惑星より「ジュピター」がモチーフになっている曲。
Finaleは「サンサーンスの交響曲第3番ハ短調op.78 オルガン付き」のフレーズが効果的に使用されている曲。
ちなみに交響曲第3番は2005年の来日時、オープニングBGMとして使用された曲です。
本当に!本当に!すばらしい演奏でした。
曲が終わると同時に観客の多くが立ち上がって大歓声です。
反応が良いからか、良い演奏ができたからか、メンバーもうれしそう。
続くThe Barbarianは、基本的にはEL&Pと同じなのですが、原曲よりもさらにヘビーになっていて、マークとベースのトラビスはヘッドバンキングしながらのプレイです(笑)
続くPrelude To A Hopeはアコースティックピアノ。
ピアノの弦を指ではじくプレイなどもありますが、基本的には原曲どおりしっとりと決めます。
A Place To Hide~From The Beginningはマーク・ボニーラの独壇場。
本当にボーカル調子良さそうです。
From The Beginningはアコースティックピアノですが、後半キースのピアノ弦ピッキングプレイが決まっていました。
いよいよエンディングが近づいてきました。
Bass Dr.のリズムに合わせて手拍子を求め盛り上がったところでHoedown。
キースがハーモニカを手に取りマークと掛け合いでオー・スザンナを演奏。
続いてマークのギターソロ。
やっぱりHoedownはいつ聞いても盛り上がります。
拍手が鳴り止まない中、最後の曲Tarkusがスタート。
大部分は原曲に忠実ですが、Massでは中間部にテルミンソロ~リボンコントローラーソロ(ベースと掛け合い)が、Manticoreでは7分近いドラムソロが、Battlefieldでは、マークのギターソロがそれぞれ入ります。
キースがテルミンの音を出し始めたら観客から大きな歓声が湧き、キースがとても嬉しそうにしていたのが印象的でした。
フルで30分超える熱演で終了。
アンコールはFanfare For The Common Manのトランペットがテープで流れる中メンバーが再度ステージへ。
マークはなぜか阪神のユニフォームを着て登場・・・と思ったら同じユニフォームを着た小学生っぽい子供もステージへ上がりパーカッションを持たされています。
ひょっとしてマーク・ボニーラの息子さん?マークは50歳超えていますからお孫さんということもあり得ます。(結局誰だか分かりませんでした)
Fanfare For The Common Manがスタートすると、会場ほぼ総立ちで盛り上がります。
例によって、「キーボードを逆から弾き、途中で間違えてしまい演奏が止まってしまうものの観客の声援で立ち直って演奏が再開される」という「知らない人が見たら本当に間違えたとしか思えない演出」が入ります(笑)
エンディングにかぶって、チャイコフスキーのくるみ割り人形(Nutcracker)から「こんぺい糖の踊り」が演奏され、Nutrocker(くるみ割り人形の行進曲が原曲)へと繋がります。
EL&PのNutrockerよりもよりロックンロールナンバーっぽい雰囲気の仕上がりで、マークの早引きギターソロもたっぷり聴くことができます。
さらにくるみ割り人形の「トレパーク(ロシアの踊り)」へとつながり終了。
思えば甲子園球場の初来日時暴動でコンサートが中止となり、ナットロッカー聞くことができず、92年か96年のどちらか忘れましたが、機材不調でロンドで終了(元々セットリストに入ってなかったのかも)、2005年には演奏されず・・・私はエマーソンがナットロッカーを弾いている姿を見るのは初めてじゃなかろうか!
いやー盛り上がりました!
会場総立ち、歓声がやむことなく、ウドーの強力なガードにもかかわらず花束を渡す女性なども多く、メンバーは満足げにステージを後にしました。
初日は2時間10分ほどでしたが、最終日はたっぷり2時間半のパフォーマンス。
しかも64歳のエマーソンがオルガンこそ倒さないものの、激しいアクションでぶっ通しのパフォーマンスというのは驚嘆に値します。
初日かなり辛かった音響ですが、今回はほどよい音量で音質やバランスも良かったので大変満足できました。(IMPはホール自体の音がイマイチなので後ろの方の人は満足できたかどうかは分かりませんが・・・)
ライティングのスタッフはポスターレットに名前が無いので日本側のスタッフだったかもしれませんが、予算なさげな中かなりがんばっていたと言えるでしょう。
最終日は曲とのタイミングも完璧でした。
ところでマーク・ボニーラという人は私は今まで聞いたことのなくインターネットで経歴を調べても今ひとつハッキリしないのですが、今回のアルバムやツアーにおいてマーク・ボニーラの果たした役割は非常に大きいように思います。
EL&Pを再現するのではなく、64歳のキーボーディストをリーダーとした、キース エマーソン バンドとして今できる最善で最高のアルバムやパフォーマンスを提供しようという姿勢は間違いなくマーク・ボニーラ主導でムードを作り上げているように見受けられまました。
キースとマークがタッグを組んでいれば、次回作や、それに伴うツアーなんてのも十分ありうるでしょう。
ハッキリ言って初日はどうなることかと思いましたが、最終日は色々な意味で感動させてもらいました。
次回の来日があることを祈りたいと思います。
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この記事へのコメントは終了しました。
コメント
はじめまして!
キース・エマーソンのライブに感動して、レビュー&感想ハントをしております。
初日と最終日の両方を体験されたなんてすっごくうらやましい!
&大阪公演の盛り上がりと素晴らしさが伝わってくるような
超充実のレポートに感謝します。
やっぱり行けばよかったなぁ、とちょっと後悔。
来日直後にまた次の来日を強く願う、そういうライブで本当によかった!
キースとマークの笑顔がすごく印象的で
音を楽しむ2人のパワーに圧倒され、エネルギーをもらえました。
よろしければこちらにもお立寄りください。
投稿: NAL | 2008/10/21 23:38
コメント有り難うございます。
AXに行かれたのですね。
CCレモンよりもAXの方が演奏も音も良かったというような噂を聞いております。
IMPに比べてAXの方が遙かにホールの音はよいのでかなり楽しめたのではないでしょうか?
キースも2000人クラスのCCレモンより800人クラスのIMPの方がやりやすそうでした。
本当に良いライブでした!
投稿: kumanomix | 2008/10/22 02:53
マーク・ボニーラは”アメリカン・ハイテク・ギタリスト”と形容され、オリジナル・ソロ・アルバムや、グレン・ヒューズと競演しています。エマーソンとはグレンのソロ・アルバムで出会い、ライブを続けています。そのライブにグレンがゲスト登場したCDはいまでも日本で手に入ると思います。ジョン・ウェットンにもにたボニーラの歌声にも似た声はエマーソンとぴったりあっていると思います。
投稿: fukaman | 2009/03/29 21:29
コメント有り難うございます。
グレン・ヒューズとは懐かしい。
最近「キース・エマーソンとグレン・ヒューズらが組んだ幻のユニットの貴重ライヴ音源が公式リリース!」ってニュースが流れていましたが、ここで出会っているわけですね。
情報有り難うございました!
http://www.cdjournal.com/main/news/news.php?nno=22873
投稿: kumanomix | 2009/03/30 08:59